テーマ 135 部下の長所をみて、プラスからスタートさせる
■「こうするともっとよくなる」という話し方をする
下記のような実験があります。
アメリカの心理学者クラーク・ハル氏の実験で、
出口に餌を置いた迷路にネズミを入れると、
出口に近づけば近づくほど足が速くなったそうです。
これは、ネズミを使った実験でしたが、
下記のコロンビア大学の実験により
人間も同じ行動をとるということが分かっています。
この実験からゴールに近づけば近づくという感覚を持つほど人は、
モチベーションが上がることが分かります。
コロンビア大学ビジネススクールの研究で、
コーヒーショップでスタンプカードを使った実験です。
1.パターンAはコーヒーを10杯飲むと、コーヒーが1杯無料になるスタンプカード。
2.パターンBはコーヒーを12杯飲むと、コーヒーが1杯無料になるスタンプカード。
ただし、最初から2個スタンプが押してある。
結果は、パターンBのスタンプカードを渡された人たちは、
パターンAのスタンプカードを渡された人よりもはるかに多く、
無料のコーヒーを手に入れたとのことです。
ゴールまでの距離が全く同じでも、
捉え方によってモチベーションは変わります。
「ゴールまでまだ遠い」という意識より
「ゴールに向かってもうこんなに進んでいる」
という感覚が人間には大事と言えます。
人の心理を利用してだますという考えではなく、
自分も含め人というものを理解する、
相手の心情に配慮するということが重要と思います。
職場では、「今、何もない、何もできていない」という、
否定的な発想ではなく、
「もうすでにこんなことができている」、
「かなり進んでいる」という肯定的な発想で、
部下の方とコミュニケーションをとることが必要です。
いままで行ってきたことを常に認める、
そういう姿勢が重要と思います。
■長所を伸ばすとゴールへ早く到達する
一水四見(いっすいしけん)という仏教の言葉があります。
同じ水でありながら、
天人はそれを宝石で飾られた池と見、人間は水と見、
餓鬼は血膿と見、魚は自分のすみかと見る。
このように見る者の心の違いによって
同じ対象物が異なって認識されることをいいます。
部下の方も上司の方によっては、
違うように評価される可能性は十分にあります。
部下のことがよく分からないときは、
その部下の方の性格、能力、考え方、対人スキルなどを
いろいろな視点から観察してみて、
何が優れているのか、何が良いのかを考えてみると、
その方の全体像がとらえやすくなる面があります。
これは、人に限ったことではなく例えば電化製品など
同じ製品でもいろいろな機種、仕様のものがあります。
それぞれに何が優れているのか、何が良いのかを考えてみると、
それぞれの製品の特長が早く分かります。
人は誰もが、欠点ばかり目につきますが、
部下を持つ管理職の方は、
まず、部下の方の長所、優れたところを
見つけることからはじめることが重要です。
現状を否定しては、
ゼロやマイナスからのスタートとなります。
部下の欠点を見て、改善することは、
マイナスからのスタートとも言えます。
現状を肯定することにより、今よりもよくなる、
もうすでにいいところまできているという
意識を持ってもらうことが重要です。
部下の方を長所、優れたところを見つけ、
より伸ばすことは、現状を肯定していることになります。
これは、プラスからのスタートとも言え、
ゴールへ早く到着できることにもなります。
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